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不思議なヒーロー(09/07/04)

この世界が語る「本当のこと」に届きたくて、
それに届くために、自分をもっとクリアにしたい。
執着を手放したり、慣れ親しんだ自分のパターンを変えたり。
自分の心の暗い部分も見つめてみたり。

だけど、
まやかしとか、ごまかしとか、
作り物じゃない「本当のこと」だけが知りたいって願い続けることに、
時々しんどくなることがある。
突き詰めれば、ウソだって作り物だって、
本当の一部かもしれないんだけど、
もっと単刀直入に「本当のこと」に近づきたいってのは、
欲張りってことかなあ、と、苦悩してしまったりする今日この頃。

そんな時に思い出すことがある。

やっぱり、同じように自分に行き詰まりを感じていたある日のこと。
大切な人との人間関係もこじれて、散々な日だった。
そんな時、自暴自棄になってしまいそうな心を抱えて、
駅前のちいさな喫茶店に入った。

あいにく満席で、
わたしはカウンターの片隅に座ってた。
気がついたら、ひとりのおじさんが目に入った。
空いている席は、わたしのすぐ隣の椅子だけだから、
わたしは荷物をどかして、普通に「どうぞ」って。

おじさんは感謝の言葉をのべると、
わたしがコーヒーを飲み干していることに気がついて、
「あなたのために、もう一杯コーヒーをごちそうしたいのですが。
いいですか?」って。
改めておじさんを見ると、
だいぶ古ぼけてくたびれた服を着ていて、
片手にくたくたの雑誌を抱えている。
この界隈によくいる、ホームレスみたいななりだけど、
一本筋が通ったような、すっきりした感じを持っていたものだから、
わたしは反射的にその申し出を受け入れた。

運ばれてきたコーヒーを一緒に飲みながら、
不意におじさんは語り始めた。
「女性が頑張るのはいいことです。
でも、女性という存在はほんとうは、
ヒマワリのような明るい笑顔と、
ほっとするような優しさで、
周りの人々を暖めるものなんです。

あなたは、さっき、私に席をさっと空けてくれました。
私をちゃんと見て、微笑んで、どうぞ、と声をかけてくれた。
必要なのは、そういうことです。

この世には普遍的なことがちゃんとあります。
本当のこと、真実がちゃんとあります。
注意して見渡せば、わかるでしょう。
それに、昔から言い続けられていることも、そのヒントです。
あなたは、真実を見つけたいのでしょう?
それで、いいんです。
これだということを、信じ続けていってください。
だけど、
一生、女性らしい笑顔と思いやりは忘れずに。
いち人間として存在することには、とても意義があるんです」

おじさんは最後に名乗って、
この喫茶店にはほとんど毎日いますって言って、
帰って行った。
わたしは、突然おじさんに心の内側を読まれたような、
何とも言えない不思議な気分だったけど、
生きている心地が胸に湧いてきて、
なんだかとても嬉しい心地になっていた。

都会のど真ん中で、
こんなことがあったことを、今でも不思議に思う。
そして、もっと不思議なのは、
常連なはずのあの喫茶店で、
あれ以来一度もおじさんを見かけないこと。

「本当のこと」っていうのは、時代を経ても変わらない、
この宇宙に確かに存在する、普遍的なものだとおもう。
誰しもの魂のなかに、ちゃんと刻まれているものなんだとおもう。
わたしは、行き詰まりそうに感じるほど、考えすぎてしまった時、
おじさんの言葉を思い出す。
女性として、人間として、きちんとあることの大切さ。
それをおろそかにしては、いのちを無駄にしているようなものだ、
ってことに、気がつく。
そうすると、ふっと楽になって、
自分の中心に戻れる気がする。
ちゃんと、人間として地に足をつけながら、
自分の中心で、きちんと物事を感じることこそが、
わたしが本当に知りたいことへの一番の近道かもしれない。

あのおじさんは、一体なんだったんだろう。
名乗ってくれたのに、
もう、会えないなんて。
必要な時にさっと現れて、消える、
ぼろい服を着た現代のヒーローだったんじゃないか?なんて、
思ったりしている。

Jul.04.2009


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