「極楽通信・UBUD」



グボガン(Gebogan)





グボガン


バリの人々は信仰に篤く、誰もが神々へのお供えとお祈りをとても大切なことと考えています。
そのバリ・ヒンドゥーの神々に捧げられるお供えものの中でひときわ美しく、カラフルなものがグボガンと呼ばれるものです。
グボガンは寺院や家寺祭礼の時に、神への感謝の気持ちをこめて捧げられます。
大きさはまちまちですが、一般的にはバナナの木の幹を芯にして、竹串で色とりどりのフルーツをさしこみ、ゆるやかな円錐形に積み上げていきます。
米の粉からつくったお菓子やカステラのようなケーキ、そして花々やヤシの若葉でできた飾りが添えられた姿は、まさに芸術品。
大きなものになると高さ1メートル、重さは20キロ以上にもなるのですが、なんとこれを正装した若いバリ女性が頭にのせて優雅に歩くのですから驚いてしまいます。


グボガン


祭礼のときにはこのグボガンを寺院まで運び、祭壇に安置し、司祭に聖水をかけてもらいます。
そのあいだに人々は神に祈りを捧げます。祭壇にずらりと並んだグボガンは、それぞれが各家庭の女達による手作りとあって、フルーツの並べ方やヤシの葉の飾りが美を競いあっているかのよう。
そしてお祈りが終わると再び各家に持ち帰り、フルーツやケーキは縁起ものとして家族のおなかにおさまります。
グボガンによく使われるフルーツは、おなじみのりんご、オレンジ、ぶどうの他、日本ではあまり目にしないものもたくさんあります。
へびのウロコのような皮をつけた渋みのあるサラック。
橙色のカラをパリッと割るとカエルの卵のような実が出てくるフルーティなマルキッサ。
一見じゃがいもそっくりなザヴォ。
ライチーの毛が伸びたようなランブータン。
ジューシーでさっぱりした味のジャンブー。
はちみつのように甘いマンゴー。そして果物の女王と呼ばれるマンゴスチン。
雨季は、特にこれらフルーツの旬。
すばらしい味と香りが楽しめる季節なのです。
あの匂いで悪名高き(?)果物の王様ドゥリアンも雨季のバリならではの風物詩。
本格的な雨季が始まる12月ごろ、島のあちこちで寺院の祭礼が行われます。
その時、祭壇に並ぶグボガンは、さぞかしおいしそうなフルーツでぎっしりとつまっていることでしょう。
あふれる太陽と豊かな雨で、たわわに実った果実たち。
そしてそれをお供えものにして神さまに捧げるバリの人々。
まさにここが「地上の楽園」と思わせる光景です。
※グボガンは、供物の一種。
バリ・ヒンドゥー教にとって儀礼を行うことは、すなわち「供物」を捧げることにほかならない。
「供物」を意味する語としては、バンタン(banten)、サジェン(sajen)/スサジェン(sesajen)があり、その種類は数十と言われている。
(原稿は、日本料理店「影武者」女将で、料理教室「ダップール・バリ」先生、佐藤由美さんの執筆です)


グボガン


(写真は写真集「オラン・バリ」の写真家・小原孝博さんに提供していただきました。バリ関係・推薦本 )
(2009/8/4)




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