「極楽通信・UBUD」



ポレン(Poleng)





ポレン ポレン ポレン

バリを訪れると、寺院の神像や儀礼の祭壇、神木などに、白と黒の格子模様の布が巻かれているのをよく見かけると思う。
これは、バリの宇宙観を反映したものだ。
バリ・ヒンドゥー教の宇宙観は、この世には善なる神々とともに、悪しき神々や悪霊たちも存在し、未来永劫終わることのない二極間のバランスの上に世界は成立していると言われている。
すべて自然は光・闇、善・悪、生・死という対になり、それらが複雑な波動を発し、濃密な場を生み出しているということなのだ。
白と黒は、この二極をシンボライズしたものだ。
バリのヒンドゥー教において、色は重要な意味を持っている。
それぞれの色は、神々に結びつく。
白色は、イスワラ神を象徴する色。
黒色は、ウィスヌ神を象徴する色。ウィスヌ神は、豊穣をもたらし、あらゆるものを悪から守る神と信じられている。
白黒の格子模様のことを、バリ語、インドネシア語でポレン(Poleng)という。
バリで、ポレンは魔除けとされている。
この布のことを「サプット・ポレン」と言う。
サプット・ポレンを巻くことで、悪を締め出す意味を強調しているというわけだ。
「サプット」とは、正装時に男の人が巻く外側の腰巻きの呼称。
普段は1枚のカマン(布)を巻き付けているだけが、正装には「サプット」と呼ばれる少し短めの布をカマンの上に重ねて巻く。
神像や祭壇、神木も人間と同じ扱いなのだ。
いつ頃から、サプット・ポレンが使われるようになったかは不明だ。
インドのヒンドゥー教には、使われていない。
石像の耳に花を挿すバリ人のおしゃれ心と繊細な優しさが、装飾として施したのではないだろうか。
寺院の入り口の両側に立つ像にも、サプット・ポレンが巻かれている。
この像は、魔物が入ってこないように寺院を守るシンボルとして置かれている。
オダラン(寺院祭礼)の時、サプット・ポレンを巻いた男衆がいる。
男衆はプチャランと呼ばれる警備の人々で、祭礼が無事に進行するように交通整理などの手伝いをしている。
寺院や村落の警備も、このプチャランが自警する。
サプット・ポレンをつけた人々は、村民を守る役割をしているのだ。

ポレン

ポレンは白黒チェックが基本形だが、近年は、ギンガムチェックのサプット・ポレンが目立つようになった。
これは、白黒の布より手に入りやすいこともあるだろうが、やはりおしゃれ心も影響しているのだろう。
そして、バリ人のおおらかさからか、ギンガムチェックの灰色は白黒の中間で人間を象徴しているとし、ポレンとして受け入れてしまっているようだ。
気は心とでも言うのか。



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