「極楽通信・UBUD」



48「ウブド・コンビニ事情(conveni)」





昔々、ウブドで買い物といえば、十字路にあるパサール(市場)か近所のワルン(雑貨屋)だったろう。
1990年、値段交渉が面倒だった頃(価格の多重構造)。
値段交渉が苦手な私は、定価表示のある「ミニ・マート《ティノ》」をもっとも利用した。
ニュピ前夜、ウブド大通りの《ティノ》に観光客が詰めかけ、パンや菓子類が棚から無くなるという時代はいつまで続いただろうか。


ティノ


1997年頃、プンゴセカンにある《日本料理店・影武者》の近くに、日本人の知人が雑貨屋を開店したことがある。
知人は、将来24時間営業のコンビニエンス・ストアを展開するつもりで、初めは深夜2時まで営業していた。
まだ、深夜営業の店がなかった時代だから、将来を見越しての出店だったのだろう。
ある夜、店に警察官が訪れて「深夜の店を我々は警備ができない。
犯罪があってからでは遅いので、今すぐ止めて欲しい」と通達された。
警察官からの注意を無視するわけにいかず、しかたなく夜11時には閉店していた。
その後、深夜まで営業する店は皆無だったので、私は、ウブドは24時間営業禁止の条例でもできたのかもしれないと喜んでいた。


人は、飽くなき便利性を追求をする。
2003年、スーパーマーケット《デルタ・デワタ》のミニ・マートが、モンキーフォレスト通りに1号店を出店。
豊富な品揃えと、商品管理は、まさにコンビニエンス・ストアだった。
2007年12月21日:《サークルK》1号店(モンキーフォレスト通り・アパ?近く)の出店で、《デルタ・デワタ》出店にも拍車がかかる。


デルタ・デワタ サークルK


これまで深夜12時までの営業時間は、24時間体制となった。
地元コンビニ《デルタ・デワタ》対、大手コンビニ《サークルK》のウブド・コンビニ戦争の幕開けだ。
2010(?)年アルファ・マート&インド・マレットが出店。
その他にも、定価表示のされた数々のミニ・マートが増えている。
今後も増加していくだろう。


アルファ・マート ナニ・マート


50メートルおきにコンビニが並ぶことも、さほど遠くはないかもしれない。
こうして昔ながらのワルンは、姿を消していくことになる。
時代が要求するものとして仕方がないかもしれない。暗くて静まり返るウブドの夜の姿は、コンビニの登場から、変化してきたような気がする。
眠らない町になってしまうのだろうか?
そして、ウブドの風景も、どこにでもある町へと変わっていく。
コンビニの特徴はセルフ・サービスだから、顧客との接触がなくなり、そこには商品と価格だけの関係になる。
人間性が希薄になり、人間の存在が感じられない店は、ウブドの魅力を軽減してしまうのではないだろうか。
釣り銭をごまかしたり、レシートを打たずに売上をねこばばするなどの、人間臭ささは残っている。


ウブドに24時間営業のコンビニは必要ないと、私は考えている。
ライブ・ミュージックが夜11時に終わるように、コンビニも終日でなく夜11時に終わってもよいのではないか。
それでも生活はできるし、不自由さを楽しむのも、ひとつのウブドらしいライフスタイルだ。
元店舗デザイナーの意見を言わせてもらえば、やたらに明る過ぎる蛍光照明と、ステンレスやプラスチックの無機質の店舗が気に入らない。
大きなフロントガラス、何の印象も残らない壁と床、つまらない色つかいも味気ない。
ほとんど無味無臭で、人間の集まるところにふさわしいとは思えない。
芸術の町・ウブドならではのコンビニ・デザインがあってもよいのではないか。
人工的な明かりを極力少なくして、月、星、ホタルの光などの自然の明かりを感じて暮らす町は、できないものだろうか。


(2012年12月1日)

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