「極楽通信・UBUD」



29「価格の多重構造(harga)」





「・・・・・♪」「・・・・・♪」「・・・・・♪」 雑貨屋のイブ(奥さん)が、キドゥン(バリの儀式で唱われる)でも唄っているようなリズムで何か口ずさんでいる。
「アジ・クドー? リマンタリ」
「ブラパ ハルガーニャ? スプルリブ」
「ハウマッチ? トゥエンティー・サウザンド」


パサール


ある村のパサール(市場)に買い物に行った友人は、ある商品を手にしていたが、すぐには、イブの抑揚ある唄声を聞いても何を言っているかは気がつかなかった。
よく聞いてみると、はじめはバリ語で「いくらですか? 5,000-」、次にインドネシア語で「いくらですか? 10,000-」、最後に英語で「いくらですか? 20,000-」と言っているのがわかった。たいへん巧みな商売テクニックである。
要するに、バリ語もインドネシア語も理解できない外国人には値段を20,000-とし、バリ語はわからないがインドネシア語がわかる客には10,000-、バリ語を知る客には5,000-と、さりげなく価格を伝えているのである。ここでもし、英語が聞き取れない日本人に「40,000-」と言ってみたら、もしかして、その値段で売れるかもしれない。
パサールのイブは、商品にもよるが、普通、バリ人、インドネシア人、外国人に対して価格を変えている。世間ではさらに細かく、地元バリ人価格、他の地方のバリ人価格、インドネシア人価格、ツーリスト価格、おまけに日本人価格と多重構造になっているようだ。これでは、なかなか地元バリ人のようには買い物ができない。


ウブド滞在の楽しみのひとつに、ショッピングがあると思う。
ショッピングをしていて、どうも値段が高くふっかけられているなと感じることは、皆さんも一度や二度ではないと思う。そう、それは確かに吹っかけられている。しかし、だからといって腹を立ててはいけない。
バリでは、昔からの習慣で地元のバリ人と他の村のバリ人とでも価格は違う。もちろんウブドでも、ウブド人より他の村のバリ人が物を高く買わされるということはよくあることだ。これは今でもそうである。だからといって、ぼられているとわかっているのに、素直に納得するわけにもいかない。気持ちの許せる範囲で、値段交渉が成立すればそれで良し。買ったあと、もっと安く値切れたかも、という考えは健康衛生上によくない。


よく、妥当な値段だったかを尋ねられることがある。
もう買ってしまったものに、高いの安いのとアドバイスしても始まらない。こんな時わたしは、よほどぼられていない限り「それは値打ちな買い物でしたね」と答える。納得して買ったのなら、それで満足するのが一番。
もうひとつ、買い物をしている時、お店の人に泊まっているホテルを尋ねられることはないだろうか。それは、そのお客さんのふところ具合のレベルを調べているのある。高級ホテルに泊まっている人は、それなりに払うべきだと彼らは彼らの勝手な論理で考えている。これはバリ人のお金持ちも同じように、お金持ちはお金持ちとして扱われる。大幅なディスカウントで値段交渉をしたいと考えている、高級ホテルに泊お泊まりの方は、ランクを落として答えるか、泊まっているホテルの名前を忘れたと言い逃れしたほうが良いかもしれない。
また、「いくらなら買いますか?」と価格をまかされた時。「○○○なら買います」と、あなたが言った場合。それがラスト・プライスになる。ラスト・プライスを決めたあなたは、買うのが常識といったところ。これを断ると、少し険悪な雰囲気になるだろう。友達プライスという、あいまいな値段もある。初対面にいきなり友達というバリ人。これもあまり信用できませんね。


日本人独特の遠回しな断り方で「また、今度」とか「あとで来ます」と言うのも、彼らに勘違いをさせる言葉だ。特に、観光地の\1,000-攻撃の物売りに、この言葉を使ったら、いつまでもつきまとわれます。いらない時は、はっきりと「買わない」と断った方が問題を残さないで済む。くれぐれも喧嘩をしないように。値段交渉のかけひきを楽しむことができれば、あなたも旅の達人になれる。


また、よくあるトラブルにベモ(公共乗り合いバス)の料金がある。
現地の人と料金が違うからと、ツーリストが大変な剣幕で怒っていることがある。これもまず、乗り込む前に現地の人から料金を聞いて調べておくべきである。料金を聞くなら、今から同じバスに乗ろうとしている人がベストだ。そして、降りる時には、正当な料金を払ったという自信をもって降りてください。それができない人は、もめないで言われるまま払った方が得策だと思う。できれば、釣り銭のないようにした方がよいでしょう。
バック・パックのような大きな荷物は、ひとり分として扱われることがある。大きなカゴいっぱい買った物をつめてベモに乗る地元のご婦人も、料金をちゃんと多めに払う。どうしても現地の人と同じ料金にするのだと、頑固にというか意地を張ってみたところで、嫌な思いをしたり殴られては、それこそ大損といったところだ。実際に、100ルピアのことで運転手に殴られ、顔が腫れ上がって病院に行った日本人女性がいた(ず〜っと以前の話だが)。
たかが100ルピアというつもりではないが、われわれツーリストはある意味で決して貧乏ではないはずだ。ただ、節約して旅行をしているだけである。それは現地の人々も、そう思って見ている。もっと上手な節約があるはず。


努力をして、バリ語やインドネシア語を覚え、パサールのイブたちと会話ができるようになれば、必ず、ショッピングにも役に立つ。頑張ってみて欲しい。




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