「極楽通信・UBUD」



49「ウブドのライステラス(Ceking Terrace)」


極楽通信・UBUD極楽通信 ≫ ウブドのライステラス(Ceking Terrace)




バリ島のライス・テラスは、観光名所のひとつにあげられている。
タバナン県ジャティルウイやカランアッサム県アバンなどが知られているが、観光ルートの道すがら随所でライス・テラスは見られる。
ウブドは山間の村と言いながらも、ライス・テラスはない。
近郊の村テガララン・チュキン(Ceking)村まで、足を伸ばさなくては見られない。


地元で《チュキン・テラス》と呼ばれているこのライス・は、1990年まで誰も見向きもしない場所だった。
その当時、友人に頼まれた木彫を受け取りにテガララン村に行った時のこと。
突然、右手の森が開け、眼下に渓谷が現れた。
渓谷の両側は、等高線のような曲線が続いている。
この下に野外劇場でもあるかのように、一点を中心にして切り取られた等高線は客席のようだ。
眺望がきくのは、幅200メートルほど。
畦道が描いた渓谷の棚田は、箱庭のように美しい。
私の育った名古屋では観られることのない、絵画のような田園風景がそこにある。
私は運転手に「この景色が観たいから、ここで止めてくれ!」と叫んだ。
しかし、運転手は「普通です」と一言つぶやいて、通り過ぎてしまった。
彼にしてみれば、何の変哲もない日常の風景。
海も文化遺跡もないウブドに、どうして観光客が訪れるのか、村人にはまったくわかっていない時代の話。
ここが今《チュキン・テラス》と呼ばれている観光名所だ。


これまでの観光ツアーは、バトゥール山の絶景を観にペノロカンの展望台に直行し、帰路は、絵画のウブド村と彫刻のマス村と銀製品のチュルク村のギャラリーや大型ショップに立ち寄るコースが主だった。
ウブドが芸能の村と呼ばれ、定期公演が毎晩上演されるのも、このあとしばらく経ってからのこと。
「地球の歩き方」に情報が載り始めたのも1996年以降。
ライス・テラスがある道は、当時、観光ルートではないため、知られずにいた。
タンパクシリン村の熱帯魚モビールがツーリストに人気だった時期、テガララン村は、本物そっくりなバナナの木やフルーツ・カービングで一躍名を知られるようになった。
マス村の芸術的彫刻とは違う、土産用の木彫りで有名になり、現在も様々な商品を世界各地に輸出している。


 ◇

それでは、今から《チュキン・テラス》を見に行くことにしよう。
まずは、足の確保だ。ベモ(乗り合いバス)を拾って行くこともできるが、時間が不定期なのでお薦めできない。健脚自慢の方には、レンタル自転車もいい。行きは上り坂で辛いが、その分、帰りは快適だ。
今回は、バイクを利用することにしよう。


アンドン交差点

ウブド東端・アンドンの交差点から目的地のチュキン・テラスへは北上すること約9キロ。


警察署 デルタ・デワタ ホワイト・ボックス

「警察署」「スーパーマーケット・デルタ・デワタ」「ホワイト・ボックス」「ガソリンスタンド」を過ぎて、ウブドとしばしのお別れ。

☆「ホワイト・ボックス=White Box」:デルタ・デワタから30メートル程行ったところにある白い小さな建物。“美味しいケーキの店”と、在住日本人・欧米人に人気が高い。2009年3月2日開店。営業時間:9.00am〜20.00pm。定休日:日曜日。電話:+62(361)979059、FAX:+62(361)979062、E-mail:whiteboxubud@yahoo.com。


看板

しばらく走ると、右手に高級ホテルの「カマンダル・リゾート&スパ」「ザ・バイスロイ・バリ」の看板が、ツーリストを誘っている。


街道 街道

道の左右に、ウッドカービングや民芸品の工房が増えていく。ここからテガララン村まで、こういった店が続き、私はこれをビジネス街道と呼んでいる。
白鷺の村プトゥルに続く道が、左手に伸びている。


街道 寺院 街道

尾根づたいに走る道は、ゆるやかなカーブを繰り返し上っていく。
時々、右に左に渓谷が見える。いくつかの村を通り過ぎた証のように、いくつもの寺院をあとにする。


テガララン十字路

テガララン村の中心地である十字路を抜けると、目的地は近い。


それは、右手に忽然と現れる。


チュキン・テラス
チュキン(Ceking)村のライス・テラス
写真提供:田尾美野留氏


所要時間は、バイクでゆっくり走って約20分。
ウブドから気軽にアクセスできる、評判のビューポイント《チュキン・テラス》。
今では、島内観光バスも立ち寄る景勝地にもなっている。


チュキン・テラス チュキン・テラス

新しいレストランが次々とオープンし、人気は増すばかり。

バリは、年2〜3回米の収穫ができるため、訪れるたびに違う風景の棚田が見られる。
水が張られたガラス・モザイクのような田、田植えが終わったばかりの田、稲が伸びた緑の田、黄金色の稲並み、稲刈り風景など、どれも美しい。
朝と夕方が、物売りに囲まれない時間帯。
のんびり鑑賞したいなら、この時間をお薦めする。
我々もお気に入りのレストランに入って、自然と人間の創った芸術作品を鑑賞することにしよう。 (2012/2/13)



※沿道には、レストランと土産物店が軒を連ね、毎日、大勢の観光客が訪れる。
2016年、畦道を下りて向こう側まで行けるようになったとの情報を聞いた。
畦道は、無惨にも踏み荒らされて土を露出させていた。
遠目に見るから美しいのに、何故に下りて行くのだろう。
今後、もっと荒らされてしまえば、観光名所としての価値がなくなってしまうのではないかと心配だ。

(撮影・2016/11/1)




Information Center APA? LOGO