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バリのカースト(kasta=階層)





ガイド・ブックを読んで、バリにカーストがあるのを知る(インドネシア語ではカスタ=kasta)。
カーストと聞くと、インドのジャーティと呼ばれる厳格な世襲制職業や不可触民を連想する人が多いだろう。そして、バリ人の信仰する宗教がインドと同じヒンドゥー教だからカーストも同じだろうと考えてしまう。が、果たしてそうなのだろうか?
実際に訪れてみるとわかるが、インドのように職業の世襲制もないし、ヒンドゥー教も、インドのものとは見た限りでもかなり違いがある。


バリとインドのヒンドゥー教の相違は、またの機会にするとして、それでは、いったいバリのカーストは、いつ、どんないきさつからできたのだろうか。
16世紀、バリはダラム・バトゥレンゴン王が君臨するゲルゲル王朝時代。それまであった曖昧な階層は、王国中心の階層に塗り替えられた。
16世紀なかば、高僧ニラルタが登場し、王権と祭司のパートナーシップが確立すると、現在あるようなカースト(4つにはっきりと分けられた)が、導入されたと言われている。
1910年以降、クルンクン王国を中心にした8つの王国がオランダの支配下にはいった時代、王制は消滅した。そのあと王は、オランダの間接統治下で現地人首長として残る。時のオランダ政府は、バリ人の信仰する宗教を眼にして、インドのヒンドゥー教と同じものだと理解し、植民地として間接統治する上で、これまでのカーストを利用することにした。それは、王家や貴族家の支配者層に権限を与えることによって、税の徴収や治安維持をはかるためのものだった。王家や貴族家、僧侶はジャワから来た、称号を持つマジャパイト王朝の末裔たちといわれている。


インドのカースト「ヴァルナ」は、僧(バラモン)、王族(クシャトリア)、平民(ヴァイシャ)、隷民(シュードラ)の4つ。これは階層の枠組みのことであって、職業の制約はない。
「ヴァルナ」は、バリでは「チャトル・ワルナ(チャトルは4、ワルナは色)」色分けされた階層と呼ばれ、僧(ブラフマ)、王族(クシャトリア)、貴族(ウエシャ)、平民の階層に区切られた。チャトル・ワルナにも、職業の制約はない。
カースト「チャトル・ワルナ」では、称号を持つ3つの階層を称してトリワンサと呼ぶ。トリワンサは、3つの、内または内部の人と言う意味(ジェロ)で支配者側から見た呼び名である。トリワンサからすると、スードラは外部の人で、外という意味のジャボと呼ばれた。
称号を持たない、もとからいるバリ人はすべてジャボと呼ばれ、バリのカースト「チャトル・ワルナ」ではスードラとされた。バリ人の8割はスードラだ。彼らは、インドのシュードラと同一視されるのが嫌で、スードラと呼ばれるのを嫌う。かといって、もとからいるバリ人に向かってジャボと呼ぶのも妙だ。


バリでは古来から、多くの親族集団の間で、独自な階層社会を形成していた。
親族集団パセッと親族集団ブンデサがいちばん高い地位で、当時の二大勢力であった。勢力を誇っていた彼らは、各地の王である。この頃のバリは、日本の中世から近世に似た知恵と策略によってのしあがることのできる実力の社会で、地位は流動的であった。
パンデ(PANDE)の称号で呼ばれる鍛冶屋の親族集団は、太古の火の祭司だ。その昔、神秘的な炎を操り、霊力を持つ金属を細工し、男性生殖器の象徴である呪的なクリスなどの神聖な物を作ったところから、尊敬され高位に扱われている。カースト導入後も、スードラではあるが、カーストに属さない特別な階層として扱われている。 トリワンサの儀礼は、ブラフマ階層から世襲された高僧プダンダが執り行うが、パンデ階層の儀礼は、パンデの親族集団から選ばれた高僧スリ・ウンプーが仕切ることになっている。古代、クリスの工匠はウンプー(empu)と呼ばれていた。
異民族王朝マジャパイトに征服されたバリは、いくつかの領地に分割され、原島民の各地の王に、領主として統治権を与え課税させた。
領地となった地域では、マジャパイトの貴族階層と古くからの自分たちの階層とを組み合わせた、何段階もあるかなり細かい階層区分を作っていった。バリ人のルーツとする民族で宗教も同じということで、抵抗なく受け入れられたのだろう。
この時代、支配者層の中に、系譜を書き換えて称号を手に入れ王族や貴族の地位を確保した者もいる。現在、純粋なマジャパイトの末裔が曖昧になっているのは、系譜のねつ造が原因のようだ。
オランダのカースト導入後、従来の土着勢力は抑えられ、すべてスードラ(平民)として統一された。複雑なバリの階層社会を4つに区切ろうというのだから、当初は、混乱したことだろう。永い統治の歴史のうちに、浸透していった。
現在バリのカーストは、称号と使われている言語に違いが見られるだけだ。


カーストを見分ける方法は名前だ。
まず、称号を持たないスードラ。長男長女はワヤン(プトゥ)、次男次女はマデ(カデ)、3男3女はニョマン(コマン)、4男4女はクトゥット。男性には前にI (イ)がつき、女性には NI(ニ)がついて呼ばれる。5人目からは、またワヤンに戻る。
僧(ブラフマ)はイダの称号だ。男性はバグースがつきイダ・バグース・〜、女性にはアユがつきイダ・アユ・〜と呼ばれる。〜以下は、ジャボ=スードラと同じワヤン、マデ、ニョマン、クトゥットと呼ばれることもある。
王族(クシャトリア)には、デワ・アグン、アナ・アグン、チョコルダなどの称号がある。やはり4つの名前しかなく、長男長女はオカ(ラカ)、次男次女はライ(ングラー)、3男3女はアノム、4男4女はアリッとなる。
ウブドの王族はチョコルダだが、クルンクンではアナ・アグン、カランガッサムではデワ・アグンが王族だ。また、ある地域ではデワやグスティが王家だったりで、クシャトリアとウエシャの区別ははっきりしない。
貴族(ウエシャ)は、デワ、グスティ、グスティ・アグン、グスティ・ングラー、シィ、ガカンなどの称号がある。名前はワヤン、マデと続くことが多い。


バリ人同士は、相手がどのカーストに所属するか探るのに、はじめは互いにバリ語の丁寧語で会話をし、そのうちカーストが分かると言語を変える。時には、インドネシア語で挨拶し、名前を尋ねてカーストを探る。
ツーリストがバリ語をしゃべるとバリ人は喜んでくれるが、カーストによって言葉が違うので、気をつけて使う必要もある。
それ以外に、カーストでツーリストが困ることはまったくないので安心してください。





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