「極楽通信・UBUD」



ジャンゲール・ムボルボール(Janger mebor-bor)




バンリ県の山奥に、近代文明から取り残されたようにひっそりと生活を営んでいる、60家族180人ほどの小さな村がある。
その村のオダラン(寺院祭礼)で、古くから受け継がれたと思われる、不思議な奉納芸能がある。
ジャンゲール・ムボルボールと呼ばれる芸能だ。
バンリ県は、ギャニヤール県とクルンクン県とに挟まれた、バリでただ一つ海に面していない県。
不思議パワーの強い土地柄と聞いている。
そんなことからバリアンと呼ばれる呪術師も多いと聞く。
バリ島最高峰のアグン山(3142m)とバトゥール山(1717m)を結ぶ線上にアバン山(2152m)がある。
ジャンゲール・ムボルボールは、アバン山の山深い村で演じられる。


それでは、ジャンゲール・ムボルボール体験談を紹介しましょう。
我々を乗せた車は、バンリの市街地を抜け、起伏の激しい曲がりくねった道を、濃密な緑の森が続く山間部に入っていった。
幹線道路を避け、車は赤茶けた土の道に入った。
両側に背の低い木立の続く道に、ときどき民家が姿を現す。
車は土壁の家の前に止まった。
車から下りた我々は、ガイドに先導されてオダランの催されている寺院に向かった。
ウブドから来ると、この地域の寺院は造りが安普請で貧弱に見える。
きっと、ウブドの寺院が特別に豪華なのだろう。


ムボルボール


西日が沈む頃になって肌寒くなってきた。
かなり山深いところに来たのを感じる。
中境内の中央に僧侶が腰を下ろし、お祈りが始まった。
奉納芸能が無事に終わることを願う祈りだ。
生け贄のひよこの鳴き声が聞こえる。
寺院の奥境内から、バロンランダとハヌマンが登場し、僧侶の前で舞い始めた。
奉納芸能は、何の前触れもなく始まる。
ランダの動きが激しくなった。トランスに入っているようだ。
ハヌマンもトランスしている。
バロンが、トランスすることもあるらしい。
ランダ、は村人に取り押さえられるようにして、奥境内に戻っていった。



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6人の青年が踊りながら中境内の中央に入って来た。
しばらく踊って腰を下ろすと、今度は8人の少女たちが、やはり踊りながら入場してくる。
踊りは、唄いながら続けられる。
踊りはジャンゲールと言われるもの 。


ムボルボール


ジャンゲールの踊り手が、コの字型に腰を降ろすと、中境内の中央に、椰子殻が積み上げられた。
椰子殻に火が点けられ、ジャンゲールが再演される。
しばらくして、椰子殻の炎の前で、僧侶のお祈りが始まった。
奥境内から、ひとりの僧侶が、何ごとかつぶやきながら出てくる。
僧侶はすでにトランスしているようだ。
続いて、ジャケットを着た僧侶が登場した。
今度は、何かに向かって指をかざしている。
やはり、もうトランスしている。


ジャケットを着た僧侶が、踊り手全員の頭に掌をかざしていく。
何かのおまじないのようにみえる。
突然、嬌声とともに踊り手の何人かが燃えさかる椰子殻に突進した。


唄い踊る男女が次々とトランスに陥り、真っ赤に燃える炭の中に飛び込み、蹴散らし、炎を浴び、火を喰らう。
・・・驚きの光景が繰り広げられる。
これがジャンゲール・ムボルボルと呼ばれるのサンヒャン(トランス)儀礼だ。
あたりがすっかり暗くなると、薄暗い豆電球が灯された。



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ボルボールとは火のことである。
ジャンゲール・ムボルボールは、別名、マンディ・アピ(火の水浴び)と言われている。
本来あるジャンゲールにサンヒャン(トランス)が加わった、この村に伝わる、満月(pernama)、暗月(tilem)、霊力の強い日(kajeng kliwon)にしか行われないと言われる芸能だ。
「百聞は一見にしかず」
機会があれば、貴方も一度自分の眼で確かめてください。
バリの不思議が体験できること請け合いです。




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