「極楽通信・UBUD」



「夢日記 @ UBUD」




アブストラクト
写真:意味のない絵


■幻聴か?


鳥のさえずりが聞こえる。
目覚めるのをためらっていると、夢をみた。

朝、鳥の鳴き声で眼が醒める。
夜明け前に聞く、鳥の鳴き声は清々しい。
そんな鳴き声の中に、時々、日本語のような言葉が混じっている。
ニュースを読む女性アナウンサーの言葉に似た鳴き声だ。
しかし、言葉のなかみは意味不明。
もう一目盛り、スピードを早めるか遅らせると、理解できる言葉になるような気がする。

鳴いているのは、以前、ウブドに滞在していた女性が飼っていた、九官鳥に似た鳥かもしれない。
彼女は1988年から1990年にかけて、ウブドの西ペネスタナン村のバンガローに滞在してバリ舞踊を習っていた。
そして、怪我をして庭に舞い降りてきた鳥を介抱し育てていた。
鳥は、キューたんという愛称で呼ばれ、当時、長期滞在者の間で人気者だった。
彼女は毎日のように、携帯ラジオでNHKの短波放送を聞いていたから、キューたんも日本語を覚えたのだろう。
私が彼女と知り合ったのは、1990年の始め頃。
彼女のバンガローを訪ねた時、私もその日本語のような鳴き声を聞いたことがある。
キューたんは、すでに元気になっていた。
チッチと鳴く間に、確かに、日本語のようなイントネーションが聞き取れる。
キューたんは、彼女が日本に帰る時、森に解き放たれた。
彼女は、寂しげにバリを離れていった。

ウブドを訪れるツーリストの間で、「夜明け前、日本語で鳴く鳥がいる」と言う噂がささやかれるようになったのは、5年ほど前からだ。
キューたんが解き放たれて10年以上も過ぎているから、同じ鳥が生きているとは考えにくい。
でも、キューたんの子孫が生きていると思うと楽しい。
今もどこかで、女性アナウンサーが語る日本語のような鳴き声でさえずっていてくれるといいな。

現実の話とが交錯する夢だった。




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