写真:チャロナラン舞踊劇(バンリ県スロカダン村)
夢の中で、ウブド近郊のオダランを観ていた。
奉納舞踊は、チャロナラン舞踊劇。
外庭で行われる奉納舞踊を鑑賞している途中、私は用を足したくなった。
私は、観衆の群れから離れた。
寺院内にトイレはない。
寺院周辺では、立ち小便する場所に気を配らなくてはいけない。
これは、坐り小便も同様だ。
寺院の壁に向かってはもちろんだが、神様の方角である山側に向かってするのも御法度。
私は、適当な藪を見つけて、道から2メートルほど中に入った。
あたりは真っ暗闇。
カマン(腰布)を捲り上げての用足し準備。
見上げれば、満天の星。
この日は、暗月のカジャン・クリオンの日。
霊力の強い日だ。
我慢していた甲斐があり、今は、清々しい気分を満喫している。
ところが、星を鑑賞する間もなく、足もとにゾワゾワした感じが走った。
ゾワゾワ感は、草履の足を伝わって広がってくる。
用はまだ終わっていない。
ゾワゾワ感は、フクラハギまでも包んだ。
この感覚は何だろう。
ジンマシンになる兆候の新パターンだろうか。
それとも、何かの霊に包まれているのか。
このまま、地面に引きずり込まれてしまうのか。
この世に思い残すことはいっぱいあるが、これが私の人生なら仕方がない。
あきらめが良いのが私の長所でもある。(友人には、短所だとも言われるが)
私は夢の中で観念していた。
ゾワゾワ感がモモに達した時、それが微かに動いているのを感じた。
私は慌てて、それを振り払いながら、藪から飛び出した。
薄明かりの下で足元を見ると、モモから下が真っ黒だった。
無数のアリが身体を包んでいたのだ。
両手を駆使して、必死に振り払った。
噛むアリではなかったのと、股間までのぼってきていなかったのが、せめてもの救いだった。
カマンを捲り上げたままの格好で、慌てている日本人の姿が滑稽だったのだろう、近くにいたバリ人が笑っている。
笑い声で眼が覚めた。
目覚めると、足もとで愛猫“チビタ”が、うしろ足でアゴを必死に掻いていた。