「極楽通信・UBUD」



プトゥラガン (Petulangan)



前へ次へ


バリ島観光のハイライトの一つに火葬儀礼がある。

不謹慎と言われそうであるが、この儀礼がバリ人に とっても、最大のセレモニーである。

火葬儀礼の風景は、祭りと錯覚してしまうほど明る い。

烈しくシンバルを叩くガムラン隊の音にせかされ るように、行列は足早に火葬場に向かう。

たくさん の男達に担がれた二台の神輿が、ダイナミックに練 り歩く。

神輿の一つは、なきがらを火葬場まで運ぶ 巨塔でバデと呼ばれる。

もう一つは火葬場に運ばれ たなきがらを納めて焼く張り子の棺、プトゥラガン と呼ばれるものである。

プトゥラガンは火葬場に用 意された、新しい白布の天蓋が取り付けられた屋根 のある、火葬堂バレ・パバスミアンに置かれる。

なきがらはバデからプトゥラガンに移され、燃やされ る。

プトゥラガンが燃えはじめると、バデにも火が つけられる。

プトゥラガンには、さまざまな形があり、カーストによって形が決まっているようである。

たとえば、 ブラフマとマンクは白の牛(Lembu)、クシャトリア、 ウエシャは黒の牛(Lembu)、ちなみに男性は雄牛、女性は雌 牛だそうである。

スードラは獅子(Singa Ambara) や半象半魚(Gajah Mina)。

時には木で作られた四 角の箱状の簡素なものであることもある。

1993年、最後の王様の火葬式といわれたギャニャールで見た ものは、立派な竜(Naga Banda)のプトゥラガンであった。

ほかにも虎、鹿などもあると聞く。

現在 ではスードラでもお金があると牛を使っているようである。

これも地方によって異なっているようで、 一概に言えない。


半象半魚
▲半象半魚(Gajah Mina)


獅子
▲獅子(Singa Ambara)


牛(Lembu)
▲牛(Lembu)


トゥブサヨで獅子のプトゥラガンを作っているところを見かけたので取材してみた。

プトゥラガンは火葬式の何日も前から、近隣 の男達によってつくられる。

プトゥラガン
1)いげたに組んだ木枠の上に、板材と裂いた竹で動物の形がつくられる。

今まで目撃したものは胴体と脚が太い木の幹で作られていた が、ここでは板材が使われていた。

ジグソー (電動自在のこぎり)によって形がつくられ、これで重さと労働時間が軽減されることであろう。

胴体は背中が蓋のように開くようにつくられる。


プトゥラガン
2)木の幹で形作られていた脚が板材になったので、ココナッツの皮をいくつも張りつけ てボリューム感をだす。

顔は他でつくられて持ってきた。


プトゥラガン
3)全身をフェルト布で覆う。


プトゥラガン
4)フェルト布の上から、並行してつくられて いた金箔やラメ、そして小さな鏡がふんだんに取り付けられ、飾られて、完成...。

獅子がキラキラときらびやかに輝きだす。


プトゥラガン
5)完成した獅子は担ぎ棒が竹で組まれ、あとは出番を待つだけである。

男達は分業で器用に作業をこなしていく。

小屋やテントの中で、バリ・コピをすすり、雑談をしながらの10日間の作業工程でした。

(1996年2月・ミニコミ誌「極楽通信・UBUD」)



プトゥラガン
★2018年12月18日、ブラバトゥ(Blahbatuh)王家のPelebon(火葬儀礼)。

近年(4年ほど)から、2)のボリュームを付ける工程に、発砲スチロールが使われるようになった。

3)のフェルト布は、溶ける素材に変わっている。

火葬の際、真っ黒い煙をあげ、ビニールが溶けて滴り落ち、一瞬のうちに燃え尽きる。



(2019年3月25日・訂正更新)




Information Center APA? LOGO