「極楽通信・UBUD」



「クランジャン(Keranjang(カゴ)」




クランジャン
●竹カゴ屋さんに並ぶ、バラエティー豊かなカゴたち。


バリには、自然の素材を利 用して編んだいろ〜んなカゴが あります。

みなさんもバリの 人々の家庭やみやげ屋さんでよ く見かけるでしょう?日本では 竹がおもに使われていますが、 バリにはカゴを編む素材の種類 がとても豊富です。

カゴだけで はなく、今も昔も、バリの人々 の生活には、そんな素材で編ま れた道具が必要不可欠です。

中 でも私たちがよく見かけること ができるカゴ類を写真に撮って みました。

それぞれの名称は、すべて、普通に使われ ているバリ語です。


スカワティ村は「竹細工の村」として、ガイド・ブッ クなどにも紹介されていて、大通りぞいには数軒のカ ゴ屋さんが並んでいます。

ところが実は、本当の竹細 工の産地として有名なのはバングリなのです。

キンタ マーニ山麓を含むバングリ県は、標高が高く、涼しい 気候なので、いい竹が育つようです。

バリの竹は、十 分すぎるほどの太陽と水分のおかげで、短期間でぐん ぐん伸びてしまい、そのせいか繊維のキメが粗く、太く、 日本の竹カゴなどと比べると、折れやすいし長持ちし ないのが難点。

しかしバリの人々は、日本人に負けな いくらい手先が器用なので、驚くほど細かい手作業で、 素晴らしい製品を作り出します。

ツーリストが好んで 泊まるバリ風コテージの天井や壁に使われている、幅 1・5cm くらいに裂いて編まれる“ブデ”という資材 やヤシの葉でお供えものを作る時に欠かせない竹ヒゴ 状の“スマッ”、そして闘鶏用のにわとりのための飼育 カゴ“グゥォン”など。

そして、スカワティのおみや げ屋さんに並ぶ竹細工のほとんどは、バングリでつく られたものと思われます。

さて、バリの歴史や文化に詳しい方なら、古来から 伝わる古文書のことをロンタルといい、そのロンタル の材料がロンタル・ヤシの葉だということをご存じか もしれませんね。

そう、そのロンタル・ヤシのことを、バリでは“ウンタル”と呼んでいます。
これは、東部 バリの荒れた暑い土地でよく見かけるヤシですが、こ の葉をよく乾燥させたものは、とても丈夫で、かつ、 しなやかに曲がるので、カゴや敷物によく使われてい ます。

プンゴセカン村にあるウンタル・カゴの店「Mangku G i n a」は、特に目が細かく、インテリアとしてもステ キなオリジナルのカゴを昔からつくっています。

その昔、村に舗装道路もなかった頃、イギリスのエリザベ ス女王が文化視察で訪れたことが、ご自慢の店。

素朴 な色合と軽い手ざわりが涼しげです。

注文も受けてく れるので興味のある方はどうぞ。

これはちょっとめず らしい素材なのですが、川辺や沼地に生息する、つる 科の植物で、“アター”というのがあります。

この細 い茎を乾かして、さらに台所のかまどの上で煙にいぶ したものは、バリの伝統家屋に欠かせない建築資材。

アランアランと呼ばれる、草ぶき屋根を、骨組みされ た竹にしっかりと巻き付けて固定させる役割を担って いるのが、このアターです。

だから、細くてもとても 丈夫で、ちょっとやそっとじゃあ切れたりしないうえ に、何十年も長持ちするのがアターの身上。

このアター を利用して、ツーリスト向けにカゴを編むことを思い ついたのは、テガナン村に住む、あるひとりのバリ人 の男でした。

はじめは口コミで、ちまちまと売られて いたアター・カゴでしたが、数年前から、じょじょに 人気が出て、今やあちこちで作られるようになりまし た。

・・・が依然として、その素材の希少価値と編む手間がかかることから、お値段はう〜んと高め。

でも「100 年はもちますよ」と言われると、日本\で数千円は安 いかも。

とにかく、しっとりした肌ざわりと、深いこ げ茶色、そして、渋い光沢は魅力です。

UBUDでも最近、 数ヵ所で売られているので探してみてください。


バリには、まだまだ自然の素材がいっぱい。

バナナ の幹の外皮を乾燥させたものはベージュ色のゴザでお 馴染みだし、ヤシの葉っぱはもうレギュラー。

おもし ろいのは、ほかの島からもいろんな資材が取り寄せら れて、和紙のような木の皮、とうもろこしの実を包ん でいる皮、などのユニークなものもあります。

意外にロタンは、ほとんどスマトラ島が産地で、バリにはあ まり生息していないといいます。


さあ、あなたも自分の部屋に飾ってもよし、実際に 使ってもよし、バリのカゴをひとつ、お土産に買って みませんか。

そして、そのカゴに思い出をいっぱいつ めこんで・・・あらあら、ロマンチックなエンディン グになってしまいましたね。

実際筆者が使っているの は、BESEK、これは大きさもいろいろあって、小物の 収納に超ベンリ。そして今は禁煙中なので出番がない のですが、アター・カゴのタバコ・ケースは、小さい フタと本体が、絶妙な噛みあわせ具合で開け閉めでき るスグレモノです。


今回は、バリの自然をそのままつかったカゴたちの 特集でした。


1.BESEK(ベセッ)


クランジャン

竹の表皮の部分を 5mm ほど裂い て編まれたもので、本体とすっぽり かぶさるフタとでワンセット。

小さ いものだと 25cm、大きいものだと 50cm 角くらい。

おもにバンタン(お 供えもの)などを入れるのに用いま す。

模様なしのシンプルなものも多 く、時には、炊いたごはんをそのま ま入れて“ムレないおひつ”にもなっ たりする重宝なカゴです。


2.KATUNG(カトゥン)


クランジャン

30cm 四方、高さ 50cm ほどの大き さ。

木や竹のワクがしっかりしてい て持運び用のヒモがついています。

これはトペン・ダンサーなら誰でも ひとつは持っている。

トペンや飾り、グルンガン(かぶりもの)を入れて 持ち運びするためのカゴです。

レゴ ンの冠にもよく使います。オダラン に行って、このカゴを持ち歩いてい る人がいたら、まず、ダンサー(か、 アシスタント)だと思って間違いな いでしょう。


3.KOMPEK(コンペッ)


クランジャン

これは、ショルダー・バック。本 体は竹ですが、底とフタの上部が ごっつく作ってあって、なかなか丈 夫。

細いヒモがついていて肩にかけ て持ち歩きます。

プダンダやプマン クがロンタルや大切なものを入れた り、オダランでクカウィン(カウィ 語=古代バリ語による唄)を唄う人 が、歌詩の書いてある厚い本を入れ たりします。

UBUDのプリ・サレン で夜、踊りがある時、チケットや売 上金をこれに入れているグループの 団長さんもいます。


4.BANGSUNG(バンスン)


クランジャン

長さ 1m、直径 30 〜 40cm ほどの 長細い円筒形をしています。

さて、いったいこれは何のために使うのでしょう? 答えはなんと「生きたブタ をこの中に押し込んで運ぶため」の ものでした。

このカゴに入れられた 何匹ものブタが軽トラックの荷台に 積まれて運ばれていたり、大きなオ ダランの前には、プラの隅っこで、 このカゴに入れられた 2 〜 3 匹のブ タが身動きできずにころがっていた りします。


5.GUWUNGAN(グゥォンガン)


クランジャン

鳥カゴを総称して GUWUNGAN といいます。GUWUNG SIAP(グゥォ ン シアップ)でにわとりカゴ、 GUWUNG KEDIS(グゥォン クディ ス)で小鳥のカゴです。

おそらくツー リストがいちばん目にする機会が多 いのが、このグゥォン シアップで はないでしょうか。

そう、この中に、 バパご自慢の立派なタジェン(闘鶏) 用のにわとりが飼われているので す。

材料は竹、大きさは直径 50cm、 高さ 70cm ほど。

デンパサールあた りのお金持ちご用達のペット・ドク ター(獣医)が、病気のネコをこの 中に入れて入院(?)させているの を目撃したことがあります。

なるほ どの使い方ですね。


6.KISA(キソ)


クランジャン

さて、GUWUNGAN の中で飼われ て大切に大切に育てられた闘鶏用に わとりは、やがて戦いに出されます。

その「いざ、出陣」の時、飼い主の 家から闘鶏場まで、にわとりの持ち 運びにこのカゴ(カバン)が使われ ます。

ちょうど成鶏の身体がすっぽ り入る大きさで、片方の開いたとこ ろから、にわとりの立派なしっぽが フサフサと出るようになっていま す。

このKISA はウンタルで編まれ ていて、偶然なのか、わざとなのか、 おしゃれな格子柄になってるの可愛 いですね。

これを普通のバッグにし て使っているイキな日本人女性もい ました。あなたもいかが?


7.KISA(キソ)


クランジャン

これは <6> の高級版。

竹で編んだベースに内側から、ビ ンロウジュの木の皮が貼ってあって、こんなカゴに入れられ たにわとりは、さぞ強かろうと思わせてしまうエクゼクティ ブ闘鶏カゴです。

<6> よりかなり大きめです。


8.KISA(キソ)


クランジャン


これも <6><7> と用途は同じですが「カゴの善し悪しなんぞ、ニワ トリの強さに関係ないわい」派のタジェン・プロご用達の KISA です。

この材料は、ただ古くなったヤシの葉。

編み方も大雑把で、ナイロン・ ヒモでぶらさげてしまうなんて、ちょっと貧乏くさいですね。

でも、 こんな KISA に入れているにわとりもまた、野性的でただならぬも のを感じさせる強いヤツだったりするんですよね。

(1996年8月・ミニコミ誌「極楽通信・UBUD」)




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