「極楽通信・UBUD」



「プルンクガン(pelengkungan)」



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プルンクガン

バリの人々は椰子の葉や竹などさ まざまな自然素材をうまく利用して、持ち前の絶妙なセンスと手先の器用さで美しい飾り物を作ります。

供物などもその一つですね。

その中でも筆者がちょっと気にかかったのが、写真(A)の飾り物です。

みなさんもきっと村や街角で見かけたことがあると思いますが、これは名称をプルンクガン (PELENGKUNGAN)といいます。

これが飾られている場所では、儀式か催事がおこなわれています。

たとえば、あなたが友人の結婚式に招待されたとしましょう。

あなたはあいにく、その友人の家を知りません。

どこそこのバンジャールのこのあたり、まではわかっ たのですが...。

という時、あとはこのプルンクガンが 門に飾ってある家を捜せばいいわけです。

便利ですね。

寺院など、お祈りするところで飾られているものはクラメアン(KERAMEAN)と呼び、催事の場合は単にデコラシ(DEKORASI= 飾り付け)と呼ぶそうです。

いろいろな場所で見かけ、まじまじと観察するのですが、一見しただけではどうしても材料と作り方が理解できず、少し欲求不満状態でありました。

ところが今回、結婚式を間近に控えて準備に忙しい、あるバリ人の友 人の家を訪れて、好運にもそこでプルンクガンの作業 工程を一部始終見学することができました。

さらに作 業にも参加することができたので、その詳しい様子をここで紹介することにしましょう。

トゥアック(TUAK) を 作るジャコー椰子の若葉・アンブー(AMBU)と呼ば れる部分です。

プルンクガン

(B)アンブーは葉が開く前未熟な若葉がひとつになっている状態をさします。

これは、まだ若いジャゴー椰子から取 れるのだと思い、ジャゴー椰子の林を見るたびに目を懲らし若いジャゴー椰子を捜していましたが、いっこ うにアンブーらしきものは見当りません。

それでは成 長したジャゴー椰子なのだろうかと捜していましたが、 やはり見付けることができませんでした。

そして百本近くのジャゴー椰子を見上げ、 捜し続け、ついに見付けるこ とができました。

ジャゴー椰子のテッペンにアンテナのような細い棒が一本真っすぐ上 に伸びています。

これがあのアンブーだったわけです。

残念ながら筆者のカメラでは、その状態を写真におさめることができませんでした。

棒のように見えるのは、まだ葉が 開いていない状態なのです。

葉が開いてしまってからでは プルンクガンを作るのに役に立ちません。

これは若葉の新芽で、もちろん一本の木に一 本づつしかつかないので、捜 すのがたいへんだったわけです。

この貴重な部分・アンブー からプルンクガンという飾り物が作られるわけです。

ちなみに、ココ椰子もこんなふうに若葉が出てきます。

ココ椰子のそれは、バリではブスンと呼び、各種のお供え物の材料になります。

さてここで、プルンクガンの作り方を順を追って説 明しましょう。

プルンクガン

(C)背中を残すように二つに裂きます。新郎とな る友人自ら作業をしています(右)。



(D)寝ている葉を起こしながら、葉の背中に付いている堅い芯をナイフで切り落としていきま す。

この時、慎重にしないと葉を切り落としてしまいます。

切り落とされた芯は、一つにまとめてほうきを作ります。

プルンクガン

(E)最後まで葉を開いたところ。

ここまでの所要 時間約 30 分。

プルンクガン

(F)曲げやすいように堅い芯を薄くします。

プルンクガン

(G)飾り付けたところ。

これをプルンクガンと呼 びます。

プルンクガン

(H)こんなふうにカットされたのはオンチェール (ONCER)と呼びます。

ほかにもいろいろな カットがあり、それぞれ名称も違うようです。

プルンクガン

(I)グルン・グルンガン(GELUNG-GELUNGAN) と呼ぶココ椰子の若葉で作られた輪のような 飾り物を付けたプルンクガン。

(1998年5月・ミニコミ誌「極楽通信・UBUD」)




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