「極楽通信・UBUD」



「夢日記 @UBUD」




影武者・囲炉裏
写真:旧「居酒屋・影武者」の囲炉裏でくつろぐ仲間たち


■時を超えた旅


昨夜、22才の私が、ウブドの「居酒屋・影武者」を訪ねる夢を見た。
影武者の囲炉裏を囲んで、ウブドに沈没した現在58才の私と、節約海外旅行を続けている22才の私が座っている。
2人は小さな座布団を敷いた板の間にアグラをかいて、囲炉裏に薪を足している。
「南国の島バリで、囲炉裏に火を入れるの?」と不思議に思う人もいるかもしれないが、ウブドはコタツが欲しくなるほど寒い夜もある。
22才の私は現在の私にこれまでの旅の話を語り、現在の私は22才の私に遠い過去の思い出の旅を語っている。

私は今、マレーシアのペナン島にいる。
10日前、インドのボンベイ(今のムンバイ)から船に乗った。
一等船室を予約したのに、チケットには「デッキ」と書かれてあった。
騙されたと気づいた時は遅く、この船に乗ってインドを出なくては不法滞在になってしまう。
1週間の船旅は、悲惨だった。
デッキは坐って寝るほどのすし詰めで、リュックを背負ったまま、潮風や雨の吹き込まない場所を探さなくてはならない。一度場所を離れると、戻ってもそこには他人がいる。
食事は毎3食、水のようにシャビシャビのカレー。
床には、カレーの汁が船の揺れに合わせて流れている。

「そうだったね。あの時は、大変だったね」。2人は共通する話題で盛り上がっている。と言うよりは、共通の体験だ。

そうやってたどり着いた、リゾート気分のペナン島滞在3日目。
やっと体力が戻り、そろそろ移動しようと考えている。
マレーシア本土に渡ったあと、ヒッチハイクでの移動を考えていたが、知り合ったペナン人に危険だと教えられ、移動手段は電車にすることにした。
マレー半島縦断電車で、タイに向かって北上するか、シンガポールに向かって南下するか迷っている。
タイに行けば、日本に近づく。
シンガポールなら、インドネシアにも足を伸ばすことができる。
しかし、シンガポールは、ヒッピー風長髪は入国禁止と聞いている。
すでに1年間の旅を続けている私の風体は、どう見てもヒッピーだ。

58才の私は「その時、インドネシアの旅をあきらめた」と、当時を回顧する。
眼の前の22才の私は「シンガポールからインドネシアに渡ることにした」と話す。
夢に出てきたこの旅は、私が22歳の時、実際に体験したものだ。
その時の私は、マレーシアからタイに向かった。
夢では、36年前、22才の私がバリ島ウブドを訪ねて来た。
23年もの「ウブド沈没」は、あの時あきらめた旅の続きなのかもしれない。


※「極楽通信・UBUDウブド沈没 」を合わせてお読みください。




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