「極楽通信・UBUD」



61「ウブドはスクーターが似合う(scooter) 」





ウブドでは、バイクのことをバイクと言っても通じない。
オートバイと言ってみても同様に通じない。
バイク (Bike) とは英語でBicycle(バイシクル)の略で自転車を示すようだ。
英語ではモーターサイクル(motorecycle)かモーターバイク(motorbike)と言う。
オートバイは、アメリカ英語のオートバイ=autobike。
バイクもオートバイも 原動機で動く自動二輪車の呼び名。
どちらも和製英語だろう。
単車と言う呼び名もあった。
では、ウブドでは、なんと呼んでいるのか?
インドネシア語のスペダモートル(=sepeda motor)と言わないと理解してくれない。
スペダは自転車のこと。
英語と同様に、原動機付自転車の意味だ。

1996年8月15日発行「極楽通信・UBUD-Vol.15」の記事「サーカス・ブリッジ」に、当時のウブドの様子が書かれてあるので掲載した。
UBUDのジャラン(道)が年々良くなっていく。
というより、今バリ島はこんな所までもと思うほど、道路はアスファルトで整備されている。
そして同時に、めざましいスピードでスペダモートル(オートバイ)やモビル(車)の台数が増えていく。 インドネシア国産のセダン車も発売されたと聞く。
これは、まさにインドネシアのモータリー・ゼーションへの幕開けではないか。
数年前までのUBUDは、ゆっくりとジャラン・ジャラン(散歩)できた静かな村だった。
それが、UBUD滞在の楽しみの一つでもあった。
今では、モビルとスペダモートルの交通量が多く危なくておちおち歩けないありさまである。

これを読んで、交通量が増えたと言っても、まだまだ、のどかだった風景が目に浮かびます。
1995年には、歩道が完成している。
段差の多い歩道で、スベッている人をよく見かけた。
それでも、のんびりとショッピングができた時代だった。
年々、ウブドは観光地として発展し続け、多くの観光客が訪れる。
2014年現在、ウブドの道路には車が溢れ、バイクも通行が困難なほどになっている。
大型観光バスが、狭い道路に進入してくるため、車の渋滞が頻繁だ。
駐車場の設置は、早急に解決しなければいけない課題だろう。
大型観光バスの乗り入れ禁止、車の駐車禁止が望まれる。
話の方向が、大きくそれてしまいそうだ。
「個人的には、ウブド内の交通手段はバイクがいい」と発言して、話を本筋に戻そう。
今回は、ウブドのバイク発展の歴史をかいつまんで説明することにした。
文章中では、日本人に馴染み深いバイクの名称を使わせてもらう。

私がウブドに滞在しはじめた1990年、村人はバイクのことを総称してホンダと呼んでいた。
1970年以降、日本製ホンダ(スーパーカブ)のバイクがウブドに普及し始めていたのが原因だろう。
このバイクは「セブン・チョブロ=ceblok」とか「ホンダ・ベベ=bebek」と呼ばれている。
チョブロはバリ語で0のこと。
70年の7と0で、セブン・チョブロだ。
べべはアヒルのこと。
ボディカラーは、赤に白が少々。
今でも現役で走っていて、クラシック・バイクとしてマニアに人気の車種だ。


チョブロ


1970年以前のバイクは「モトル・ピット=motor pit」と呼ばれていたと言う。
理由はわからない。
デンパサールでは、各国各種バイクが走っていたが、ウブドでは珍しい時代。
スカワティとウブドに、各1台しか保有者はいなかったそうだ。
ウブド内や近郊を走るのは、小さなバイクが適している。
小型バイクを「ホンダ・べべ」「モトル・べべ」などと呼ぶ。
タンクが前にある大きめのバイクは「ホンダ・ラキ」「モトル・ラキ」。
ラキ(laki)は男性のこと。
バリ人は「モトル・ムアニ(muani)」と呼ぶことがある。
ムアニは、バリ語で男性の意味。

イタリア・PIAGGIO製のスクーター「ベスパ=VESPA」は、古くから普及していたようだ。
これもマニアに人気の車種。
左で操作するクラッチが扱いにくいスクーターだ。
そして、スクーターと言ってもウブドで通じない。
ベスパはベスパ。
車種が、そのまま呼称となっている。


ベスパ


スクーターは、ウブドに最適な乗り物だと思う。
バリ人の正装は、カマン(腰布)を巻く。
足を揃えて乗せることのできるスクーターは、バリ人のためにあるようなバイクだ。
足下に荷物が置けるのもありがたい。
正装のご婦人が、頭に供物を乗せてバランスよく走る姿を見かける。
時には、マイカー並みの親子4人乗りだったりする。
何人乗っても、ウブド内でポリスに注意されることはない。


田尾写真 田尾写真
田尾写真 田尾写真
田尾写真
※写真提供・田尾美野留氏


スクーター商戦がバリで始まったのは、いつ頃だったか?
まず、600万ルピアの台湾製の安価なスクーターが出た。
100ccクラスで、消臭剤(キムコ)に似た名前だった。
すぐに壊れ、修理が不可能だったので、半年もすると市場から消えていた。
2005年に、ヤマハがオートマチックのスクーター「ヌーフォ=NEUVO」と「ミオ=Mio」を発売。
ホンダは同年、オートマチック・スクーター「ファリオ=VARIO」を発売。
オートマチックは、なぜかメーテック(Metic)と呼ばれている。
ウブド人は、日本製のメカニックを盲目的に信じていてメード・イン・ジャパンの信奉者が多い。
金額は高いが日本製バイクの人気は高い。
ミオは、インドネシアの人気女性ボーカリスト、アグヌス・モニカをCMに起用して女性の顧客を獲得。
これが爆発的人気を博した。
オートマチックのスクーターは、バイクに比べ燃費が悪くパワーも弱い。
それでも、新車購入は、ほとんどだろうと思うほど、ウブドにミオが溢れた。
ウブド人の知人に聞くと「トレンドだ!」と言う答えが返ってきた。
2010年、「ミオ」に市場を独占されたホンダは、巻き返し戦略としてインドネシア初のレトロ・タイプの「スクーピー=Scoopy」を発売。
「毎日がますます楽しくなる!!」のキャッチコピー。
懐古デザインの “スクーピー” は、顧客の欲求にフィットしたのか、見る見るうちに市民権を得た。
ウブドの町中を颯爽と走る “スクーピー” の姿が増えた。
毎年のモデルチェンジとボディカラーの斬新さで、市場を制覇する勢いだ。
ピンク、パールブルー、ワインレッド、クリーム、チョコレート、赤黒のツートンカラーなどなど、カラーリングも豊富にある。
参考価格:Rp13,650,000-。
ホンダ・ファリオの人気が高いのも付記しておく。
以上の情報は、行動範囲の狭い私の周囲に限られていることをご了承ください。


スクーピー スクーピー


私のバイク遍歴は、アストレア800→アストレア・スター(ASTREA STAR)→アストレア・プリマ(ASTREA PRIMA)→スープラ(SEPRA)→スープラX(SEPRA X)。
そして、オートマチックになって、ファリオ→スクーピーとホンダ一辺倒できている。
日本で乗っていたトレイル・バイクがホンダだったせいで、今でもホンダの名前に愛着がある。
パワーは物足りないが、ウブド近郊しか乗り回さない年寄りには、スクーターがピッタリのバイクだ。
ウブドらしく発展するのは、交通渋滞をなくす政策が必要だろう。
それには、小型バイクが一役買うだろうと考えるのは、飛躍し過ぎだろうか。


(2014/1/25)




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