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魔術師ダドンとの遭遇(08/12/22)
1年前の12月、大好きだったバリ人おばあちゃん
通称ダドンがこの世界を去った。
今回バリへ出かける直前、ふとリアルにダドンを思い出し、
その不思議な思い出と人となりを、書いてみようと思い立った。
ダドンと初めて出合ったのは、
ウブドの日本食レストランで、ジェゴグツアーの出発を待っていたときのこと。
ボロボロの薄汚いバスタオルを
ターバンのように無造作に頭に巻き付け、
これまた薄汚れたぶかぶかのTシャツに、色のあせたサロンを巻いた老婆が
よたよたとレストランに入ってきたのだ。
同じテーブルについていた
当時オーナーを務めていた日本人男性I氏と知り合いらしく、
「う〜あ〜、あう〜!」
と嬉しそうに奇声を発しながら、わたしたちのテーブルにやってきた。
ダドンは唖だ。耳が聞こえず、言葉をしゃべれない。
そのときのわたしはそんなことは知らなかったけど、
茶目っ気たっぷりの笑顔と、
全体から醸し出す明るい雰囲気に目を奪われ、
もうすでにダドンのことを好きになり始めていた。
ダドンは同席していた男性の手を見るや、
突然声を荒げた。「あうっ!!!」。
そして、たじろぐ男性の手をむんずとつかみ、
男性が人差し指にはめていたごっつい石入りの指輪を
引き抜き、しかめっ面をして、テーブルに転がした。
男性がそれをまたはめようとすると、
凄い剣幕で制止する。
「あ〜、それ、あんたと合わないからはめるなって言ってんだわ」
I氏が言う。
ダドンは不思議な力を持っているのだと、
I氏は教えてくれた。
I氏の友人がヘルニアで歩けなくなってしまった時、
誰もなにも頼んでいないのに、
どこからともなく現れたのが、I氏とダドンの出合いだったという。
ダドンは友人の腰をマッサージし始め、
エイッと気合いを入れて、なにかしこりのようなものを抜き取った。
もう大丈夫だと言う仕草のダドン。
言うまでもなく、友人の痛みはすっかり消え、
歩けるようになったのだという。
その後、ダドンはI氏のレストランにまたフと現れ、
それ以来、ちょくちょく訪れるようになったのだそうだ。
指輪をはめるなと言われた男性も、
そんな話を聞いて、指輪を鞄にしまった。
空の手を見て、ダドンはカラカラと笑った。
「よしよし。それでいい」と言いたげに。
その8ヶ月後、わたしがウブドに住むこととなり、
I氏が作った雑貨店で働くこととなるとは、
その時のわたしには知る由もない。
そして、ダドンと密接な関係が始まるとも、
未だ知らず、のわたしなのだった。
つづく・・・
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